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西安探訪インタビュー

松宮さん、こんにちは。今回のインタビューは西安の展示作品についての内容です。

・私たちのあなたに対する理解によると、あなたは長い間、中国文化と中国書道の研究に力を入れています。私たちがお聞きしたいのは、中国の書道と現在の日本の書道の類似点は何だと感じていますか。また違うところは何でしょうか。

日本の書道史は、大別すると、漢字と仮名に分類できます。仮名は当然日本語の表記の美ですが、実は平安時代以降は、漢字も日本語として受容され、独自の発展をしてきました。中国では科挙試験があったので、楷書がしっかりかけないといけない。無論、日本でもそういう整った楷書を書く人もいましたが、もう少し表現が自由でした。漢詩を書くというのは、日本でも伝統があります。それは、中国と近い表現です。その中に、日本人の独得の美意識も入っていますが、おそらく中国の人でも、身近に感じてもらえるものです。漢詩の表現という文脈では、お互いが共有できると思います。

ただ、相違という点では、第二次大戦後ですが、日本の書道はアート化します。井上有一とか森田子龍たちが開拓しました。かなり欧米人を意識している。中国でもそういう影響を受けた人もいると思いますが、中国では特に改革開放後、美術(西洋)と書(東方)の融合をした領域の開拓者も増えていますよね。呉冠中とか、范老師とか。日本では、そういう作家が少ない。私は日本人として、そういう世界を俯瞰した表現にも挑戦したいと思っています。

・あなたは回腕法を使って書いていますが、回腕法の日本での発展について簡単に紹介していただけませんか。

回腕法は、日本への流れは二つあります。一つは明治時代、楊守敬によってもたらされました。日下部鳴鶴や、巌谷一六、山本竟山が直接、楊から影響を受けています。私の回腕も日下部の流れです。ただ日下部たちは楊が来る前から、理論的には段玉裁の書論で、回腕を練習していました。もう一つは中林梧竹が直接、北京の潘存に弟子入りしています。

最近の私の研究によると、回腕にも帖学系と碑学系がある。帖学系は張照が代表的で、段玉裁によれば、ルーツは董其昌になります。日本に入ってきたのは碑学系で、潘存、あと、康有為などの碑学系書法家は、それに近い執筆法をしていますよね。日本では、最近、両潮流の整理が行われています。

・近年の日本の青年は書道を学ぶ際、手首戻し法を使うことが少なくなってきましたが、原因は何だと思いますか。

それは、碑学系の書が実学性を持たなくなった。明治、大正期みたいに今、漢文で石碑を作ることは、日本ではなくなりました。ただ、その執筆法によって、工人的な内涵を表現するという文脈で、細々と継承されているのが、現実だと思います。

・あなたは以前は伝統的な書道作品を創作していましたが、今回西安で展示された作品の中では、伝統的以外に、文字が絵になっている状態が多い。どのようなきっかけであなたは、変化したか。また出品作の中で、どの作品が一番好きですか。それはどうして?

私は、最初は木簡を素材に作品を作っていました。木簡のカタチが面白く、あと康有為が好きだったので、表現的にはそういう影響があります。あと数年前、范炳南先生にお出会いでき、その作品に感動した影響もあるでしょう。ただ私は書法家なので、そういう画的な要素を一つ一つ勉強して、取り入れていきたいとおもっています。ただ始まりは、木簡の戦国縦横家書を素材にしていて丸い印をおして、これに太陽の意味を込めたことに始まります。戦争をテーマにしたとき、太陽が多いから戦争が起こる。そういう隠喩で、そこに日本で今、人気の中国の戦国期をモチーフにした漫画「キングダム」の雰囲気を込めたいという形で進展しました。私は、いまこの下の作品(戦国縦横家書Aが気に言っていますね。ひとりの芸術家として、世界の戦争の必然と反戦の願いを込めて。

・私たちはあなたの作品の中の多くの場所に記号化されたものが入っているのを見ました。少し私たちに解読していただけませんか。例えば多くの作品に赤い点が出てきて、それは何を象徴していますか。太陽のようなものもあります。字とともに、何を表現しているのでしょうか。

赤色の太陽は、中国の神話に基づいています。羿の日射神話。あれは、戦争の隠喩ですよね。尭の時代ですね。そういう太陽の表現から、顔彩を使うようになって、中国古代の焚火や霊魂、血、煙、人身供犠、足跡など、を表現に持ち込むようになりました。今後も意味のある表象、イコノロジーを多彩に盛り込んでいきたいと思っています。

・このいくつかの作品を単独で解読してくれませんか。

作品名称:戦国縦横家書A 19章 秦客卿造謂穰侯書

作品解读:逆襲

不遭时,不得帝王。今攻齐,此君之大时也已。因天下之力,伐雠国之齐,报惠王之耻,成昭王之功,除万世之害,此燕之长利而君之大名也。 书云:‘树德莫如滋,除害莫如尽。

「戦争の転機。新しく太陽が、光明が山から見えてきた。そういう充実した戦闘の字姿を表象しています。」

作品名称:戦国縦横家書B 19章 秦客卿造謂穰侯書

作品解读:入れ墨と漢字

除君之害,秦卒有他事而从齐,齐、赵合,其雠君必深矣。挟君之雠以诛于燕,后虽悔之,不可得也已。君悉燕兵而疾攻之,天下之从君也,若报父子之仇。

「戦争時、捕虜や奴隷は、入れ墨を施されました。時に人身供犠に用いられています。その恨みは、夕陽の中で燃焼されます。諦観の中で。

黒という字は、入れ墨人形は、唐蘭の説ですが、その字源説に依拠しています。」

作品名称:戦国縦横家書C 19章 秦客卿造謂穰侯書

作品解读:吴不亡越,越故亡吴;齐不亡燕,燕故亡齐。齐亡于燕,吴亡于越,此除疾不尽也。以非此时也,成君之功,除君之害,秦卒有他事而从齐,齐、赵合,其雠君必深矣。

「戦争の極意。病根を徹底的に絶つことによって、万世が開ける。

一つの太陽のもとに平らぐ。最終的に秦によって、中国は統一される表象です。」

作品名称:甲骨文 人身供犠

作品解读:王占曰、其獲。其惟丙戌、其惟乙臧。之月允雨…

「戦争の犠牲に人身供犠で焚焼される入れ墨人。その壮絶な戦いの表象と戦争の現実は、太陽はいつも眺めているという作品です。」

作品名称:コラージュ 格物致知

作品解读:

「侯場盟主と何紹基のコラージュ。中央に篆書で、格物致知と墨象しています。

侯馬盟書の赤色。おそらく盟書の血の契り。現代のアメリカのバスキアや呉冠中に啓発されたところもありますが、それを東方的に表現しました。

因みに何紹基も回腕法です。

太陽と入れ墨。

私の墨子論は、入れ墨集団の献身的な労働主義者、社会主義者たちであり、書家の淵源だと考えています。」

西安探訪インタビュー” への1件のフィードバック

  1. 太陽の光と血の両方をイメージした朱墨は迫力があり印象がとても強く残りました。また同じ字であっても、同じような表現をすることなく,一つひとつが異なっていたので見応えがありかっこいいなと思いました。

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